会社が目指した人員体制は、解雇時点で完全に達成されていた。
原告と、地裁をも欺いていたJAL
更生計画案における運航乗務職の人員計画は、JAL本体およびJALグループ運航各社の全運航乗務員に対する計画である。...機長、副操縦士、訓練生、航空機関士、外国人乗員、加齢乗員という運航乗務員全てが...削減対象とされていた。
“削減後に残る人数は約2970名、更生計画以上に削減することはない”
乗員組合との団体交渉において、JALは、削減後に残る人数について、「更生計画案では2010年度末で約2970名」と回答していた。
また、2010年12月9日の機長組合との団体交渉においても、企業再生支援機構の担当者が、更生計画以上に削減することはないと認めていた。
FE、パイロット訓練生の地上職変、退職等によって削減目標を超過達成
更生計画案で予定された...JALグループ全運航乗務員の削減人数844名のうち、JAL本体における削減目標数は、...826名である。
解雇当時、JAL本体では...849名の削減が確定しており、更生計画案において設定された...運航乗務職の削減目標数826名は、超過達成していた。
これは、航空機関士とパイロット訓練生の退職見込みとされた93名が、実際には航空機関士の地上職変、退職、訓練生の地上職変、退職等によって169名も削減していたことが大きな要因となって、超過達成したものである。
JALグループでは、...935名の削減が確定もしくは確実に見込まれており、...削減目標数844名は、超過達成していた。(これは、上記に加え)加齢乗員、外国人乗員の削減が大きな要因となって、超過達成したものである。
地裁では実際の状況が明らかにされず、誤った判決に
この点、地裁判決は、...「同年12月31日までの希望退職の応募者の累計は稼働ベースで291名となり、必要削減数に照らして、稼働ベースで80名足りなかったのであるから、同日付けの時点で、それだけの数の人員削減を実現することが、更生計画の内容として必要であったと認めることができる。」として、上記の事実を無視してきわめて粗雑に希望退職募集の目標未達80名の人員削減の必要性を肯定している。
しかし、地裁では、...実際の削減状況等が明らかにならなかった結果、上記のような不合理な判断となったものに過ぎない。
控訴審において...、特に、JAL本体において重要な削減対象である訓練生、航空機関士の超過削減や、グループ全体における外国人乗員や加齢乗員の削減数等の削減状況を考慮した上で、運航乗務職の人員削減の達成・未達成を論じなければならない。
希望退職募集の削減目標の未達のみをもって解雇するという不合理
いうまでもなく、希望退職措置は人員削減の一手段でしかない。...運航乗務職においては、事業規模縮小に応じた必要な人員体制というのは、2974名と設定された。
...希望退職以外の任意退職、非正規運航乗務員である外国人乗員・加齢乗員の契約終了、地上職変等によって、2974名の人員体制は、本件整理解雇当時既に確立していたのであるから、削減の一手段である希望退職募集の目標が未達かどうかが問題となるものではない。...希望退職募集の削減目標の未達のみをもって人員削減の必要性を肯定し、解雇するということの不合理性が一層明白となるのである。
JALは、人員体制・削減状況などの具体的資料を裁判に出さず、反証もせず
控訴審における審理を通じて、JALは、...「本件における運航乗務員の削減目標は、縮小後の事業における必要人員数を満たすように設定されており、解雇にあたっても解雇時点における必要人員数を超える運航乗務員に対して行っている」などの抽象的な主張に終始し、控訴人らが主張する具体的な削減状況について認否をしない。
控訴人らは、...証言、...陳述書...JALが作成した資料、...議事録等を提出し、JAL本体における削減目標826についても、JALグループにおける削減目標844についても超過達成し、JALグループ運航乗務員2974名の人員体制が実現していたことを立証した。
ところが、JALは、運航乗務員の削減状況に関する資料を(明らかにするよう求めたのに対し、JALは)提出するなどの反証を一切しない。
他の要件(要素)を検討するまでもなく本件解雇は無効というべき
以上のとおり、...更生計画案の内容とされた運航乗務員の人員計画は実現していたのであるから、運航乗務員を削減する必要性はなかった。
本件解雇は、更生計画案・認可された更生計画(事業計画)に照らして過剰な人員削減にほかならない。しかも、JALは、それでもなお人員削減が必要であったとすることについて、必要な反論・反証を行っていない。この点で、本件解雇が権利の濫用であることは明白であり、整理解雇の他の要件(要素)を検討するまでもなく、本件解雇は無効というべきである。
機長への作為的な解雇や、不透明な人事
希望退職で機長の削減目標を大幅に超過達成しても18名を解雇
JAL本体における希望退職の目標数371名のうち、機長の削減目標人数は130名、副操縦士の削減目標は241名と設定されていた。これに対し、実際の希望退職では、第一次募集で機長37名、第二次募集で機長約100名の応募があったと説明されていたにもかかわらず、機長の希望退職募集ならびに機長の解雇対象者に対するブランクスケジュールアサインが続けられた。
JALは、機長の削減目標以上の退職者が出ると、副操縦士の年齢基準を上げることにより副操縦士を削減対象からはずしてブランクスケジュールの対象からはずし、機長はそのまま削減対象としてブランクスケジュールのアサインを続けたのである。
こうして、最終的に機長の希望退職の応募者の合計が154名となり、設定されていた機長の削減目標を大幅に超えて達成していたにもかかわらず、...削減対象としていた機長をどこまでも削減対象からはずさずに、機長18名を解雇した。
このように、機長という職位における希望退職募集の削減目標として設定していた130名に対し、目標を超過達成していたのであるから、人員削減の必要性はなかったのである。したがって、機長18名の解雇は無効とされなければならない。
解雇の影で不透明な人事、年齢基準に該当する一部機長をJ-AIRに転籍や再雇用
2010年11月末までに、J-AIR出向中であったJAL本体の機長6名が、JAL本体を自主退職し、2010年12月1日から、J-AIRの乗員として採用された。しかも、この6名は、いずれも機長の整理解雇の年齢基準55歳以上に該当する機長であった。
上記人事は、同じ年齢の機長でありながら、一方は解雇され、他方は、たまたまJ-AIRへ出向中だったという理由でグループ会社において雇用先が確保され、転籍しているという点に大きな問題がある。出向者であっても、JAL本体の運航乗務員である以上、全て希望退職の対象となっていたし、実際にもJ-AIR出向中のJAL本体の機長が希望退職により退職した例もあった。したがって、職場からも、J-AIRが上記6名を採用したことに対し非常に不透明な人事であるとの意見が出され、乗員組合は団体交渉においてJALに対し抗議をした。
さらに、単に「不透明な人事」ということにとどまらず、この6名の退職があったにもかかわらず、JALが主張する371名の削減目標数が減っていないという点も不当である。
J-AIR出向機長の定年退職後の再雇用
自主退職の機長6名の他に、J-AIRに出向中の機長1名が、2010年10月にJAL本体を定年退職し、その後、J-AIRに加齢乗員として再雇用された。
解雇対象者がブランクスケジュールにより追い込まれていた時期に、定年退職した機長が加齢乗員としてグループ会社に採用されていたのである。
しかも、JALは上記の人事について、乗員組合に何ら説明をしていない。この事実は、本裁判中の乗員組合の調査により新たに判明したものである。
上記の定年退職機長の再雇用は、一方で現役運航乗務員が解雇され、他方で定年退職した乗務員の雇用がグループ会社内で確保されているという点で、大きな問題がある。
本来の目的を見失い、人員削減を自己目的化してしまった地裁判決
もともと人員削減の必要性は存在しない
地裁判決は、
...「全ての雇用が失われる破綻的清算を回避し、利害関係人の損失の分担の上で成立した更生計画の要請として、事業規模に応じた人員規模とするために、人員を削減する必要性があったと認めることができる。」と判示している。
しかし、本件整理解雇時点で既に更生計画の定めた「事業規模に応じた人員規模」は実現しており、人員を削減する必要性がなかったことは、...詳細に述べたところである。
更生計画の本来の目的は、継続的に利益の出せる経営体制の実現
地裁判決は、
...「本件更生計画は、一般更生債権の87.5%の免除を受け、株主に対してはいわゆる100%減資を行う等利害関係人の権利変更について定められ、その利益(裏返しとしての損失)を調整した上で成立したものであり...」「一時的な更生計画を上回る営業利益を計上したからといって、又は人件費の抑制を行うからといって、事業規模に見合わない人員を抱えることは、全ての雇用が失われることにもなる破綻的清算を回避し、利害関係人の損失の分担の上で成立した更生計画に沿うものではないし、...」とする。
しかし...本件更生計画及びその基礎となるとする事業計画である「JALグループ再生の方向性について」等において...、費用削減のために「事業規模を縮小」するとしたもので(あり)そして、JALは、(その)一内容として人員削減施策を策定したとしている。...(そして、その)目的は、「継続的に利益の出せる筋肉質な経営体制の実現」なのであるから、人員削減の必要性は...業績とは無関係ということは決してないのである。
もともと他社よりも低い人件費を対策に求めるのは誤り
また、...二次破綻の可能性について言えば、財務状況、業績が重要であることはより当然のことである。控訴人らは、JALの経営窮境原因は、関連事業への無謀な投資による損失等に由来するものであり、もともと控訴人らの人件費コストは全日空との対比で見ても低廉なもので、破綻原因とそれへの対策を人件費に求めることに誤りがある。
人員削減それ自体を自己目的化してしまった地裁判決
地裁判決は、こうした厳然たる客観的事実を看過して、あるいは不当にも無視して、人員削減を「人件費削減の手段」としてではなく、人員削減それ自体を「更生計画の目的」であるとして、人員削減を自己目的化してしまったのである。
それ以前から解雇の必要が全くなかったJALの経営状況
2010年9月末時点に利益目標を上方修正
JALは、2010年9月末の時点で、更生計画上の初年度利益目標であった641億円を約700億円上方修正した修正計画を策定。
2010年12月末時点(解雇の時点)で人件費の目標を超過削減
JALグループの2010年12月累計の連結営業費用は、当初の更生計画の目標を修正した9592億円よりも290億円改善。この内、人件費についても、2011年3月末日時点において、目標としていた人件費2549億円を206億円も超過して削減している。従って、本件整理解雇時点において、すでに人件費についてはその目標を200億円近く超過して削減されていたのである。
2010年12月末時点(解雇の時点)で、営業利益・営業利益率は大きく改善
JALは、2010年12月末時点で、更生計画上の初年度目標641億円を900億円以上上回る1586億円の連結営業利益、JAL単体でも1251億1400万円の累計利益を上げるに至った。これにより、2010年12月末の連結営業利益率は、14.6%となり、更生計画上の2012年度の目標であった9.2%を遙かに上回る収益性を備えるに至っていた(ちなみに、全日本空輸株式会社の2010年12月期の連結営業利益率は7.5%であった)。
2010年度決算は、営業利益目標の約2.9倍、全ての指標大幅改善
2011年3月期における業績は、営業利益1884億円を確保している。特に営業利益は目標の約2.9倍を確保しているのである。...自己資本比率は16.5%に改善している。加えて、連結人員数も対目標値で約1300名の超過削減となる3万1263名となっている。2010年12月期からわずか3か月の間に、純資産で1000億円以上、自己資本比率で10%近く改善しているのである。収支尻が特に重視されるのが営業キャッシュフローである。プラスであれば、本業を継続するための資金繰りに懸念材料がないことを意味(する)。
JALグループの2009年度における営業キャッシュフローはマイナス472億円であったものが、更生手続が開始した2010年1月19日から手続が終結した2011年3月末日までの期間でプラス860億円となった。この金額は、破綻前の2008年度のプラス278億円を大きく超えるものであり、JALが営業活動から新たな資金を増勢する力を回復していたことを示している。
二次破綻の危険性などおよそ存在しなかった。
むしろ、再上場の要件をほぼ満たすまでに財務状況は改善しつつあった
JALは、…「固定費の割合が大きい一方で、頻発する「イベントリスク」による収益変動が大きいという特性があり、長期的な視点に立って事業上のリスク要因の払拭に努める必要性」を強調する。そもそも、本件整理解雇当時、JALには、予防措置を講じなければならないような経営破綻の兆候はおよそ存在しなかったのである。
...醍醐聰教授の意見書によれば、有利子負債、自己資本比率が更生計画の目標値を超えるテンポで改善していた事実を合わせ考慮すれば、本件整理解雇当時のJALには、予防的解雇を実施しなければならないような経営破綻の予兆は全くなかった、むしろ、その時点では、再上場の要件をほぼ満たすまでに財務状況は改善しつつあった、と述べているのである。
企業活動を支える『人』を排除し削減される人件費は0.1%
本件整理解雇により削減される人件費は約14.7億円である...営業費用合計額の0.1%台にすぎなかった。
...本件整理解雇がJALの経営にもたらす経費削減効果としては極めて小さなものに過ぎない。JALが経営破綻に至った様々な要因を改善することで図られる経費削減効果の大きさを考慮するならば、あえて整理解雇という最後の手段まで用いて、企業活動を支える『人』を排除し、比較的経費削減効果の少ない人件費を削減することの必要性はなかったのではなかろうか。
本件整理解雇は本更生手続の基本目的である事業の再建・継続のために、どうしても不可欠であったなどといえる状況にはなかったことは明白である。
業績の回復が見込まれていた時点で人員規模・解雇を再検討すべきであった
解雇の経営判断に、将来の予測を考慮に入れていないのは問題
解雇時を基準とするとしても、その時点で経営状況が以後改善することが客観的に予測できる事情が存在する場合には、それらの事情は、人員削減の必要性判断の誤りを推認させる重要な判断材料とすべきである。
(そして、そういう)判決例がある。
倒産法研究者の田頭章一教授も...解雇時点において予測できる将来事象としての業績回復の兆しを視野に入れて、解雇回避措置を慎重に検討する必要性を指摘している。
労働法研究者の根本到教授も・・・会社側が解雇の必要性を否定する事情が将来生じることを十分に予測できた場合には、それを経営判断に際し考慮に入れていないことは問題とされるべきなのである」と述べている。
解雇による人件費削減の効果をJAL自身が合理的に説明できていない
本件整理解雇による人件費削減の効果をJAL自身が合理的に説明できない限り、そもそも本件整理解雇の必要性は存在しなかった、とJAL自らが認めたことに等しい。
JALは、本件整理解雇の必要性について、JALが二度と倒れないようにするために必要な施策であると説明してきた。
しかし、本件整理解雇実施以後の業績推移を見れば、本件整理解雇がそうした施策とは無縁の、人員削減それ自体を自己目的化した施策であったことが明らかである。...本件整理解雇後においては、人員規模それ自体を追求、検討することは一切なされていないのである。
2011年度通期の業績は、マスタープランに示す営業利益目標758億円を大きく超える2049億円の営業利益を計上した。この大きな要因としては、営業費用計画値1兆772億円に対して、実績は9998億円(計画差774億円減)と大幅な費用減がなされたことがみてとれる。本件165名の解雇による人件費削減効果額は、JAL主張としても約20億円であり、業績への影響はまったく無いといっていいほど僅少なものである。
再上場の発表をするまでに
JALは2012年8月3日付で…15%程度を株主への配当に充てる意向」といわゆる「再上場」に関して、…発表を行った。
理由として、2012年3月期に2049億円の業績を上げられたことを掲げている。この業績の要因として、事業規模の縮小、40%の人員数削減、40%の人件費単価の削減等を挙げており、人員関連施策の目的も「業績」にあったことを示しているのである。その一方で、人員規模それ自体を対象とする説明等は当然ながら一切存在しない。
再上場で、企業再生支援機構は3000億円近い売却益
JALは、2012年9月19日に株式を再上場した。...JALの株式の時価総額は約6900億円となり、全日本空輸株式会社の約6400億円を超えた。企業再生支援機構は、その持株を全て売却し、出資金3500億円を全て回収した上に、さらに3000億円近い売却益を得た。
2013年度3月期(通期)売上高、営業利益、経常利益、純利益全ての数値で、JAL自身の業績予想を上回っている。営業利益率は15.8%にまで上昇した。また、…純資産は5831億円、連結自己資本比率は46.4%と中期経営計画の目標の50%にさらに近付いた。
「増益が継続していく」「十分なリスク耐性」を当時すでに予測していた
JALの本件整理解雇以降の飛躍的な財務状況の改善は、更生計画初年度に行われた大規模な固定費削減による利益改善効果としての「内部的」増益要因が、「構造的」に形成されたことに起因している。こうした効果は「一時的」なものにとどまるものではなく「継続していく性格」を有しているのである。
本件整理解雇実施後僅かに3か月弱しか経過していない時点の「日経ビジネスにる稲盛会長のインタビュー」においても、稲盛会長が、東日本大震災による大規模な減収のもとでも、「リスク耐性」の形成を前提にして、所定の利益を確保することができるとして、業績回復予測を語っている。
むしろ事業計画の再検討や人員補充の必要性を再検討する必要性が
最高益の達成が高度の蓋然性をもって見込まれることにより更なる売上の拡大や航空路線等の事業戦略の上方修正も考えられ、かかる経営状況に応じて、今後の事業計画の再検討や人員補充の必要性を仔細に再検討する必要性が(当時に)あったのでないだろうか。
本件整理解雇時点において、上記のJALの飛躍的な業績回復とその実績については、相当程度予測が可能であったことに照らして、それらを視野に入れて本件整理解雇の必要性を検討した場合、本件整理解雇の必要性はおよそ認められる余地などなかったのである。少なくとも、その必要性・緊急度は全く取るに足りない極小のものとなっていたのは明らかなのである。
金融機関の関心事は「債権の回収」が確実に出来ること
リファイナンスの合意は「整理解雇の必要性」の根拠とはならない
国は、労働者との十分な協議を求めていた
JALは...主要行とのリファイナンスの合意について、更生計画(その前提をなす事業計画)が定める人員削減施策に重大な支障が生じていないことがリファイナンスの協議の前提とされており、その点からも管財人が本件解雇を実施せず人員削減施策を完遂しないとの選択肢はなかったと繰り返し主張している。
(しかし)本件においては、
日本政府及び国土交通大臣が、JALが再生を果たすために必要な支援を行うと声明を発表していること、
厚生労働大臣が、
...企業再生支援機構に対して、労働者との協議を行うようにJALを指導すること、
...JALと労働者との協議の状況への配慮を求めていること、
...労働者の雇用の安定に配慮した労働者との十分な協議の場の確保を要請していること,
に照らせば、管財人は、...解雇回避のための努力を尽くすべきであった。
既に賛同している銀行が、大幅な利益を上げているJALのリファイナンスに
同意しないことはおよそ考えられない
もともと事前調整型の...本件更生手続においては、...更生計画案の作成・提出の時点で、主要な債権者の理解と賛同に基づく調整が既に行われていたと解するのが自然である。
2009年9月30日現在の主力5行(DBJ、国際協力銀行、みずほコーポレ?ト銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行)の...最も債権残高の大きなDBJが、...更生計画案について賛成する意向であることを企業再生支援機構に通知していたことも、このことを強く裏付けるものである。
裁判所への提出段階で、既に更生計画案に賛成していた債権者らが、その後、...事業計画を遙かに上回る利益を上げ、...更生計画案に定めた弁済率に支障が生じる事態などないことを知りながら、JALに対して人員削減目標を完遂することをあくまで求め、それが未達である限り、解雇による人員削減を実施して目標を完遂しなければリファイナンスに同意しないなどという条件を出すことはおよそ考えられない。
主要5行にとって人員削減施策は
「自らの債権が確実に回収できる」ための手段のひとつにすぎない
2010年11月30日に主要5行と締結した「基本合意書」...は、リファイナンス協議の前提条件として、「...最終契約締結までの間に、更生計画に記載されている...持続的なコスト削減策等の実現に重大な支障が生じていないこと」...「損益・財政状況の悪化により、対象事業者の更生計画の実現に重大な支障が生じていないこと」とする合意を取り交わしている。
つまり、基本合意書においても、人員削減施策は削減数の追求それ自体が目的ではなく、コスト削減策の一環としての人件費削減の手段として位置づけられている。
主要5行は、リファイナンス契約を締結するに当たっては、自らの債権が確実に回収できる目途に最大の関心があったことは当然である。そのための前提として、...3年以内にJALの株式が再上場される見通しが立つことを条件に、企業再生支援機構が3500億円の出資を確実に履行されることが基本合意書の骨格をなしていたのである。
こうした主要5行の利害に照らせば...JALの主張は、基本合意書の文脈を歪曲・改作し、人員削減と人件費削減の目的・手段の関係を恣意的に切断する誤りを犯している。
JALは人員削減目標の達成を組合や債権者に隠していた
基本合意書が締結された2010年11月30日の時点でJALグループあるいはJALの運航乗務職の人員削減目標は達成されていたか、達成されることがほぼ確定していた...。
しかも、JALは、後記に記載のとおり、上記の事実を乗員組合に対して一貫して隠し続けた。また、基本合意書の文面に照らして、JALは、主要5行を初めとする債権者に対しても上記の事実を隠していたと考えるのが合理的である。
以上のとおり、持続的なコスト削減策等の実現に重大な支障が生じていないこと及び現実の人員削減の到達状況その他飛躍的な業績回復の実績等に照らして、基本合意書の内容はクリアされている。
従って、本件整理解雇を基本合意書によって、正当化すること、とりわけ、本件整理解雇を、更生計画の定める人員体制の達成時期とされている2011年3月末日を3か月も前倒しして強行することを正当化することなどおよそできないというべきである。
更生手続での目標・目安でしかない「削減目標」
JALは、...更生計画を上回る好業績が認められることがあったとしても、管財人が利害関係者の了解もなく、更生計画の遂行を取りやめ...ることは許されないと主張する。
これは、...人員削減目標が達成された本件においてはそもそも妥当しない。
ただ、そのことを措いても、この主張自体がそもそも誤りである。
すなわち、更生計画に記載された事項の内...「その他規定」の記載事項については「...更生債権の返済方法を支える事情」に過ぎず、必ず遂行する必要があるものではない。JALが更生手続で定めた「削減目標」もその一つであり、「一般的な人員削減の必要性」に基づく目標・目安でしかない。...解雇回避努力が尽くされた後になお必要とされる「解雇による人員削減目標数」を...検討をすること自体不可能なことだからである。
将来の人員の必要数増や、退職者数増が予測された場合、解雇は許されない
解雇後の人員状況を考慮する多くの裁判例
実際に、我が国の裁判例においても、解雇の翌年度に新規採用をしたという事実関係に基づき人員削減の必要性を否定した裁判例や、解雇後の退職等の人員状況の事実関係に基づき、将来の退職者増の予測など解雇時点でも認識できた事情を考慮すべきであるとした裁判例が存し、解雇後の事情についても考慮しているのである。
また、...解雇後に新規採用した場合には人員削減の必要性が否定される傾向が強いうえ、将来の退職者増の予測など『本件解雇時点でも認識できた』事情を考慮すべきであると判示する裁判例もある
(既に述べているように)解雇当時、...更生計画案で予定された運航乗務職の人員計画は実現していた。本件整理解雇時点において、運航乗務員を削減する必要性はなかったのである。
希望退職募集の目標数未達をもって人員削減の必要性があるとするJALの主張を前提としても、既に述べたJALの業績回復・経営状況や4〜5年先を視野に入れた運航乗務員養成の特殊性に鑑みれば、本件整理解雇の必要性はなかったというべきである。
首都圏発着枠拡大による路便・機材数増と運航乗務員の必要数増加の見通しをJALは当時から持っていた
更生計画案作成当時、が予定され、
...羽田空港について、第4滑走路の整備に拠る容量拡大、24時間国際拠点空港化、2010年10月以降の発着数増加、成田空港について、アジア有数のハブ空港としての地位を確立するため、...容量拡大を進めていくことが謳われていた。
航空各社は、...燃費などの効率がよい中小型機を導入し、ダウンサイジング化して、運航頻度を増やす戦略へ推移していた。(これら)に対応するためには、運航乗務員の人員計画上、運航乗務員の必要数を増やさなければならない
JALも、更生計画案に、羽田発着枠拡大をにらんで需要を確実に取り組んでいくという趣旨を明記し、首都圏発着枠増大に伴い路便を増やす方針を立てていた。
実際にも、更生手続中から、中型機であるボーイング787型機等の導入を決め、777型機から787型機への移行訓練等を予定していた。
JALは、2010年6月末の交渉などにおいて、2011年度は機材6機増=+96人、2012年度は6機増=+80人、トータルで176名も運航乗務員の必要数が増加すると説明していた。
つまり、本件整理解雇が実施された2010年度下期における乗員の必要数は、「一時的」なものに過ぎず、解雇後に、乗員の必要数は徐々に増えていく見通しであった
事業規模縮小は「一時的」なものに過ぎなかった
解雇後に明らかとなった事業規模拡大の中期計画
JALは、...2012年2月15日に発表した「...中期経営計画」において、2010年中に既に周知の事実であった首都圏発着枠増加を「大きなビジネスチャンス」と説明し、...増便、新規開設といった規模拡大を明確に打ち出した。
そして、路線の新規開設、増便に伴い、国際線の便数については2011年度対比で2016年度は21%増、国内線の便数については...5%増という数値を示していた。
中期経営計画を受けて、運航本部は、...JALグループの運航乗務員の必要数について、「2016年度に向けてパイロットベースで10%増となります。」と説明している。
運航乗務員の必要数増も、路便計画や機材計画同様、解雇後に突如として生じたものではなく、更生計画案を作成した当初から予定されていたことの延長に過ぎない。JALが、本件整理解雇の時点で、運航乗務員の必要数増の見通しをもっていたことは明らかである。
解雇時点でも認識できた将来の退職者増(人員流出)
JAL本体では、2011年度は38名、2012年度は63名、合わせて101名もの運航乗務員が退職した。
機長昇格訓練中断や新人事賃金制度といった流出原因は、解雇当時既に決まっていた事情である。
(また)、2010年12月には、ジェットスターアジアやスカイマークなどの航空他社が中途採用を本格化させたことも含め、流失の発生は十分予測可能だったはずである。
実際にも、2010年11月10日の事務折衝において、機構担当者は、「人員調整した会社では、その後離職率が増えるという現実もある」といった認識を示していた。
解雇当時、JALは、人員流出を含めた有効配置数減少のリスクを抱え、そうしたリスクを十分認識可能であった。
その後の人員削減計画の修正・撤回をみると解雇を回避した方が経営上有利だった
乗員養成計画の再開を早め、地上職変者も乗員訓練生に戻す解雇当時の経営判断の修正・撤回
JALは、
...機長昇格訓練再開時期2014年度を修正・撤回し、2012年11月に、
...副操縦士昇格訓練についても、...2015年度を修正・撤回し、2013年度から再開することにした。
(さらに)二度と運航乗務員には戻さないという前提で
...地上職に職種変更した...ライセンス無の元訓練生についても訓練対象とし、運航乗務員へ戻すことを決めたのである。
訓練を当分の間行わないことが解雇の前提であった
...JALは、当分の間、機長昇格訓練も副操縦士昇格訓練も行わないことを前提に、運航乗務員の必要数を割り出した結果として、被解雇者に働く場はないと退職を迫り、整理解雇を強行した。
(これらは)社内からの訓練投入とはいえ、運航乗務職の新規採用と同視でき、...解雇に矛盾する人員計画であるとともに、...解雇によって、年齢基準や傷病基準に該当する副操縦士を排除した上で、ライセンス無の元訓練生を含む200名規模の副操縦士昇格訓練再開を決定し、副操縦士に昇格することも、労働者の不当な入れ替えと評価せざるをえない。
人員削減の一環として切り離したHACも再子会社化
さらに、最近では、更生手続下でグループの連結から切り離したHAC(北海道エアシステム)について、再子会社化の方向性が示されている。
JALが、HACの運航乗務員の人数を、グループ連結切り離しによる人員削減数としてもカウントしていたことからすれば、HACの再子会社化の方針も、人員削減を含む解雇当時の経営判断の修正・撤回である。
解雇当時から十分予測可能だったこれら経営判断の修正・撤回
解雇当時から予定されていた運航乗務員の必要数増・予測された有効配置数減少のリスクからすれば、訓練に関する計画(や)人員削減の経営判断の修正・撤回は、解雇当時から十分予測可能...であった。
本件整理解雇時点において、こうした修正・撤回の事態を視野に入れて検討したときには、本件整理解雇の必要性を認めることはできなかったのである。少なくとも、その必要度・緊急度は極めて低いものとなり、組合が提案するワークシェアなどにより解雇を回避しうる条件が広く存在していたのである。
被解雇者全員の雇用を維持した方が事業の再建・存続に有利であった
縮小後の一時点に必要数を超える運航乗務員が在籍していたとしても、乗員組合が提案した、運航乗務員の有効稼働数の減少と人件費の削減の双方の効果をもたらすワークシェアなど雇用維持のための解雇回避策を行って、一定の時間経過の下での必要配置数の増加あるいは運航乗務員の流出・人員減少に柔軟に対応することが可能であったのであり、またそうすることが経営上も合理的であったのである。
むしろ、4〜5年先の中期的視野の下に行われる乗員計画、乗員養成の特殊性、事業規模の拡大傾向、業績回復動向などを前提とすると...被解雇者全員の雇用を維持した方が、事業の再建・存続に有利であった。
不十分な解雇回避努力のJALと、組合提案を十分に審査せずそれを許した地裁判決
人件費と人員数の両方を満足するワークシェアの組合提案
意図的にか内容を正確に捉えていない地裁判決
地裁判決は、「一定の解雇回避努力を行った」「相対的に、手厚い解雇回避努力を尽くしている」と評価し、控訴人らが主張する雇用維持を前提とする解雇回避措置について、「ワークシェアリングの内容は、一時的な措置で問題を先送りする性質のもの」...とした。
乗員組合は、「稼働ベース」によるワークシェア提案(第3次提案)を行った。
被解雇者81名の解雇を回避するために...輪番で毎月81人の乗員が1か月の休職をとることになる。毎月人は入れ替わるが、常に必要な人数が休職を取得し、在籍者を「稼働ベース」でカウントすることで、81人分削減(休職者81名=稼働ベース0人)されたこととなり...人件費と人員数の両方を満足する提案であったが、...地裁判決は、...「人件費削減効果」とのみ評価し、稼働ベースによる人員削減効果を持つ第3次提案の内容を正確に捉えていない。地裁判決は意図的にか、上記第3次提案のワークシェアの内容について触れていない。
「一時的措置」とは言えない、組合のワークシェア提案
仮に、...一切の事業規模拡大がなく、自主退職や、新たな他社への出向などの減耗要素が全くないものと想定したとしても、定年退職者の発生により、徐々にワークシェアの規模は縮小されながら、定年退職者の累計が81人となる2016年度内に終了を迎えることになる。
乗員組合は、前述の解雇回避提案に加え、以下の提案を行った。希望者に対し地上職への職種変更を行う(ただし)将来の乗務復帰の可能性を否定(しない)、
希望退職に応募した運航乗務員に対し、再雇用の権利を付与する。
しかし、この提案に対するJALからの回答はなかった。
他にも解雇回避努力を怠っているJAL
JALの100%子会社であるJEX、J-AIRは、JAL本体からの乗員の供給がなければ運航が維持できない状態であり...外国人乗員と加齢乗員を本体からの出向者で置き換えていくと説明していたが、具体的にそのことで何人の解雇回避がなされたのか、削減目標数との関係からの具体的な説明はな(かった)。
ところが、2010年当時に加齢乗員としてJ-AIRに在籍していた機長3人が、2013年4月の時点においても契約解除されることなく在籍している。更に、(シリーズ????)で述べたように、2010年10月にJAL本体を定年退職した機長1名を、J-AIRが加齢乗員として採用している。
この点においても、JALが、解雇回避努力を怠って(いる)。
その後を見ると乗員計画上は最も効果を発揮し、解雇を回避する方法であった
2011年度以降2016年度に向けて予定された運航乗務員の必要数増を考えた場合、第3次提案のワークシェア等の解雇回避措置は、職場にも受け入れられ、乗員計画上は最も効果を発揮し、解雇を回避する方法となりえた。
実際にも、本件整理解雇後に事業規模を縮小から拡大に向け、解雇当時の判断を修正・撤回して、機長昇格訓練再開時期の前倒し、副操縦士昇格訓練再開時期の前倒し、ライセンス未保有の元訓練生の訓練投入等を決めた事態に照らしても、乗員組合が真摯に提案していたワークシェア等により人員体制を実現し、人件費を削減しながら雇用を継続することは、現実的且つ合理的な解雇回避措置として有効に機能したのである。
これを「一時的な措置」として、それ以上にその実現可能性を審査しなかった地裁判決の誤りは重大である。
解雇に至るまで際立つ
信義則違反、不当労働行為の連続(一)
「ワークシェア的なものも含めてやっていく、
いきなり整理解雇など考えていない」と明言したが
2010年1月21日、...8つの労働組合を対象に、事業計画に関する説明会が開かれた。
...人員削減を予定していること、しかし、その手段については、関連企業の非連結化による削減、定年退職などによる自然減、早期退職、一時帰休などワークシェア的なものも含めてやっていく、いきなり整理解雇など考えていないと明言した。
この説明に対して、...乗員組合は、...直ちに整理解雇をすることはないという約束をしたものと受け止め、...勤務、通勤、賃金などの労働条件の切り下げの提案には柔軟に対応する一方、整理解雇だけは認めることはできない、との立場から、...ワークシェアを基本とした様々な施策を検討し、...緩やかな形での人員調整施策を求めていく、そのためにJALに具体的な提案を行っていく、というスタンスに立っていた。
その裏で組合を欺き続けていた
当初から整理解雇を想定・ワークシェアを行う意思なし
しかし、JALは、以上の言明とは裏腹に、当初からワークシェアを行う意思などなかったことが明らかである。
地裁において被告側証人として証言した運航企画室企画部計画グループ長(当時)は、陳述書で、...整理解雇の人選基準を発表する3か月前の2010年6月の時点で、既に人事考課基準、傷病基準、年齢基準という整理解雇基準を策定した上で、運航乗務員について、誰がこれらの基準に該当するかをシミュレーションしていた(ことを述べている)。
(これは)解雇予告通告前日の2010年12月8日の事務折衝で(の)「6月時点では傷病基準は何もなかった」という説明...とも矛盾するものであり、本件訴訟において初めて明らかにされた事実である。
裏で、退職強要面談の計画を具体的につめていた
さらに、JALは、2010年6月30日付の...運航本部の内部文書において、9月末から10月にかけての個人面談のスケジュールや人員配置など、人員削減施策に対する具体的内容を詰めていた...すなわち、人員削減の対象者を特定し、乗務から外し、面談を行って退職に追い込む方針を確定し、そのための準備を具体的に検討していたのである。
不合理極まる人選基準案を
組合の頭ごなしに一方的発表
JALは、...第一次希望退職措置の終了後の9月27日、突如、整理解雇の人選基準案を提示してきた。
この点について、JALは、...団体交渉を想定して同日付で作成した質疑応答集において、「組合との議論を経ずにすでに解雇基準の会社案を組合員に説明していると聞くが、不当労働行為ではないか?」という設問を設定し、これに対して、「...あくまで会社案であり、決定したものではなく、今後の話し合いの状況によっては変わりえるということを明確に説明しており、不当労働行為にはあたらないと考える。」との回答例を用意している。
これは、JALが、整理解雇の人選基準案について、当初から労働組合に提案することなく発表する予定であったこと(労使協議の無視・形骸化を意図していたこと)を自白するものである。
「事業規模拡大の計画は全くない」との虚偽の説明で「ワークシェア」を拒否
ワークシェアを検討すべきではないかとするQ1に対する回答例として、「事業規模も2012年度までに拡大は全く計画されていない」「必要数を超える要員を抱えるだけの余裕はない」
「計画上、今後の事業規模拡大が全く織り込まれていない中で、人員規模の縮小を一時帰休やワークシェアという一時的、臨時的な対応で乗り越えようとすることは、債権者には理解されない」といった答弁を用意している。
しかし、...解雇後にJALは中期計画を発表し、事業規模拡大を打ち出したのである。
...JALは、団体交渉において、虚偽の説明を行ってワークシェアを行わないことを正当化しようとすらしていたのである。
これは当初の説明を180度ひっくり返す対応
実際にも、2010年9月29日から開始された人員削減施策に関する団体交渉の当初から、JALは「...希望退職しか考えていない、ワークシェアでは債権者の理解を得られない」という回答に終始した。
これは、2010年1月21日の...発言を180度ひっくり返す、極めて不誠実な対応であった。
解雇に至るまで際立つ信義則違反、不当労働行為の連続(二)
人間の尊厳を奪うブランクスケジュール・退職強要面談
JALは、約330名の運航乗務員に対して、2010年...9月分の勤務割りにおいて、9月27日以降、本来労働日でありながら、乗務を入れず、スタンバイを連続させる、不可解な行動を取った。
乗員組合は、...直ちにこの勤務割りを撤回し、業務のアサインを求める抗議文をJALに発信した。
ブランクスケジュールをアサインされたことを知った運航乗務員は、JALによって整理解雇の対象者とされたことを知り、強いショックを受けた。
JALは、2010年9月27日に、整理解雇の人選基準案を発表したが、その人選基準案の対象者とブランクスケジュールの対象者はほぼ一致していた。
これはJALが整理解雇の対象とした者をいわば名指しで特定した上で、それらの者について、希望退職措置に応募しなければ解雇されるしかないという二者択一を突きつけることで、自ら解雇することなく、対象者が「自主的に」退職したという体裁を取るために練り上げた、事実上の「指名解雇」とも言える段取りであった。
JALは、乗員組合の反対を無視し、2010年10月2日から、ブランクスケジュールの対象者に対して、最大3回に及ぶ面談を順次実施した。その場では、JALの担当者が「このままでは整理解雇になる可能性が高い」「このまま残っても職場は用意していない」「希望退職で必要削減数に達しなかった場合には、整理解雇の対象者となる」「希望退職に応じないと整理解雇になって、退職一時金の上乗せができなくなる」と述べている。
第2次希望退職募集措置の締切日である10月22日が近付くにつれ、本人だけでなくその家族も含めて精神的・肉体的に追い詰められていった。それは、人間の尊厳を奪う極めて残酷なやり方であった。
組合は、争議権確立に向けた手続と並行しワークシェア提案
執行部は、整理解雇に反対し、JALに正常な勤務割りを行うことを求めるために争議権を確立し、解雇回避に向けて強い姿勢で事態と取り組むことを決定した。
組合としては、争議権の確立手続の開始と並行して、柔軟なワークシェアの提案を行った。 ところが、JALは、2010年11月12日には、既に整理解雇の方針を事実上決定し、これをマスコミを通じてリークした上で、
...事務折衝において、「2011年3月31日までに人員削減が達成できなければ整理解雇に合意すること」を組合に迫るという、絶対に組合として受け入れられない条件を敢えて求めてきたため合意に達することができなかった。
しかも、...事務折衝後に、JALは、組合に対して、人員削減目標数を達成できなかった場合には、整理解雇を行うことを通告してきた。
争議権確立投票に介入の不当労働行為の連鎖
JALは、...翌11月16日には乗員組合やキャビンクルーユニオン(CCU)に対して、事務折衝の開催を申し入れてきた。
飯塚ディレクターの発言は、企業再生支援機構の正式な見解として「争議権を確立すれば、3500億円の出資を行わない」と述べていること、また、加藤管財人代理の発言は「裁判所が、労働組合が争議権を確立した場合、更生計画案の認可をしない可能性がある」という極めて重大な発言であった。
乗員組合執行部は、...文書による組合への提示を求めた。
しかし、(会社は)理由を示さず、組合の要求を拒否した。
JALは、事務折衝から2時間程後...には、運航乗務員に対する職場説明会において、出席していた加藤管財人代理が前記の発言内容を周知した。
また、B767運航乗員部は、発言のあった11月16日の夜に、所属の機長、副操縦士全員に対して、B767乗員部部長、副部長連名で、当日の説明会で、管財人代理から、「企業再生支援機構は、争議権が確立した段階で3500億円の出資を取りやめることを正式に決定した」、「会社存続のために、今後も引き続き正しい状況による各個人での判断を宜しくお願いします」とのメールを発信している。
翌17日には、運航本部より乗員組合の組合員が所属するJALの全組織に対して、やはり前記の発言内容が周知されている。
そのため、乗員組合には、組合員から「本当に投票を続けても大丈夫なのか」など、争議権を確立することに不安を訴える問い合わせが相次いだ。職場では日増しに混乱が生じ、正常な投票行動を行える状況ではなくなったことから、執行部としては争議権投票を中止せざるを得ない事態に追い込まれた。
...労働組合として使用者と対等な立場で整理解雇回避に向けて話し合うための手段を奪われたと受け止めたら(れ)、整理解雇の恐怖と闘っていた組合員の中には、あきらめて衝動的に希望退職に応じた者もいた。
(これに対して、東京都労働委員会は、2011年7月5日、...不当労働行為を認定し、救済命令を発出した)。
なおも交渉による解決を目指した労働組合
乗員組合は、2010年11月30日、なおも、労使交渉による整理解雇の回避に向け、更なる柔軟なワークシェアの提案を行った。
(しかし)JALは、...ワークシェアが極めて有効であり、それを実施すれば本件整理解雇を回避できることを知りながら、敢えてそれを採用せず、本件整理解雇を強行した。
説明義務に違反する人員削減状況の隠蔽解雇手続上重大な信義則違反
JALは、団体交渉や事務折衝において、希望退職募集措置以外の削減を含むJAL本体の運航乗務員の人員削減状況を説明せず、専ら希望退職による人員削減目標数371名に対する応募状況しか説明しなかった。JALグループ全体の運航乗務員の人員削減状況についても、更生計画の目標数である人員体制2974名に対して、現時点で何名に達しており、後どれぐらいの人員削減が必要か、という説明は全くなかった。JALはこの点を意図的に隠したのである。
(数多くの事務折衝・団体交渉において説明はなく、さらに)
2010年12月21日の団体交渉に出席した大西社長(当時)は、...解雇対象者に支払う賃金その他の人件費の増加が問題なのではなく、JALが再生していく上で、必要な施策を着実に進めていかなければならない...と説明した。
そこでも、大西社長は、更生計画の目標数であるJALグループ全体の運航乗務職の人員体制2974名について、解雇予告前日の時点で何名に達しており、後どれぐらいの人員削減が必要か、という説明を一切しなかったのである。
JALは、JALグループ全体、JAL本体の人員削減目標の達成をひた隠しにしたまま、JALの業績の飛躍的改善と整理解雇による人件費削減の関係についての合理的説明も欠いたまま、更生計画における人員削減目標時期である2011年3月31日を3か月も前倒しして、整理解雇を強行した。これは、本件整理解雇手続に重大な信義則違反があったことを示す事実である。
機長の削減目標を達成しかしJALはそれまでの説明を一変
JALは、在籍する機長の削減目標が達成されたにもかかわらず、機長を整理解雇する方針を変更せず、副操縦士を整理解雇の対象から外しながら、機長の整理解雇を強行することを正当化するために、それまでの、削減目標は機長・副操縦士という職位ごとに積み上げた数値との説明を一変させる、という極めて不誠実な対応を取ったのである。
信義則違反、不当労働行為の連鎖・集中
この点に本件の際だった本質
本件整理解雇は、こうした、JALの、短期間に集中し、関連し、重なり合った背信行為の積み重ねの末に行われた。その意味で、本件整理解雇は、個別労働契約関係上、あるいは集団的労使関係上、使用者が拠って立つべき信義誠実の原則に重大に違反して行われたものである。この点に本件整理解雇の際だった本質があり、本件整理解雇はかかる点からも無効であるといわなければならない。
整理解雇の真の狙い
長年にわたるJALによる物言う組合の活動への嫌悪と、その中心人物への敵視による不当労働行為
この解雇そのものが不当労働行為である(一)
本件整理解雇の対象となったのは、分断の歴史を乗り越えた後に、乗員組合で、職場を基礎にして、争議権を背景に労働条件の向上や航空の安全の確保に取り組む活動を定着させるなど、物言う組合活動を牽引し、機長組合においても、争議権を確立して交渉する方針を提起し、労働組合らしい運動を模索してきた者達である。
また、分裂状態にある客室乗務員の職場においても、少数派とされたキャビンクルーユニオンとも共同してJJ労組連絡会議を立ち上げて、社内で物言う組合を結集してJALと対峙してきた者達である。
そして、JALが争議権行使と同視するほど嫌悪していた航空労組連絡会に機長組合が加盟する上でも中心となって活動してきた者達である。
本件整理解雇の経緯と対象者を見れば、本件整理解雇が、長年にわたるJALによる物言う組合の活動への嫌悪と、その中心人物への敵視による不当労働行為であることが明らかとなるのである。
“そんな人を残して、その後の再建を果たせるのか”と
更生手続に乗じてJALから排除する人物を最初から選定していた
JALは希望退職開始前の2010年6月時点では、すでに更生手続に乗じてJALから排除する人物を選定していた。
運航本部の内部文書では「わざわざ希望退職に応募しないような者をJALに残すわけにはいかない」という明確な意思を明示している。
内部文書においてJALが、自らは決して希望退職に応じない者=「そんな人を残して、その後の再建を果たせるのか」と決めつけてJALには残さずに排除しようとした者である。
排除する人物を意図を持って選定していたことは、10月18日の機長組合との団体交渉で、加藤管財人代理が「条件を変更することによって回避できると言われるのはその通りだが、私たちも決して今の基準を思いつきで作ったわけではない」とターゲットを決めて整理解雇の人選基準を作成したことを認めているとおりである。
組合への敵対的な対応をしてきた人物を交渉担当者としてわざわざ呼び戻す
本件整理解雇をめぐる労働組合との交渉には、JALにおいて一貫して労務担当を担ってきた大村元専務があたった。同人は、労務部長、労務担当取締役、客室本部長の経験があり、組合の状況について最も熟知していた。その後、JALの子会社の役員となっていたところ、2010年2月にわざわざ管財人からの要請でJALに専務待遇で呼び戻されたのである。
大村氏は、更生決定以前に、労務担当役員として乗員組合との交渉にあたっている際に、就業規則の不利益変更の効力を否定する判決が確定したにもかかわらず、それを無視して新就業規則を提案するなど組合への敵対的な対応をしてきた人物である。
「計画よりも3ヶ月前倒し」で確実な解雇を図る
そして、本件整理解雇における交渉においても、更生計画の人員体制の達成状況等について正確な説明をしなかった。
機長組合との交渉においても、機長の必達の削減目標とした130名を超過達成したにもかかわらず、人員削減目標の達成時期を更生計画終了の3月31日まで延ばせば、更に希望退職者が出て機長解雇の必要性のないことが一層明らかになることから、中心人物を確実に解雇で排除しようとして、大幅に前倒しして12月31日に機長18名の解雇を強行したのである。
旧経営陣における労務対策を熟知する大村氏が、本件解雇にいたる交渉にあたったこと、そして、その経過からも、本件ではJALが不当労働行為意思を有していたことは疑いようがない。
組合の中心的活動家・組合役員経験者が整理解雇の対象となる人選基準
そして、発表された整理解雇の人選基準は、現に年齢基準で解雇された者を見れば明らかなとおり、組合の執行委員や委員長経験者、JALが嫌悪する航空連議長や前議長、日乗連議長と副議長など産別組織の役員、また委員長経験者などを含んでいる。また傷病基準による被解雇者についても安全会議議長や組合役員、経験者が多数含まれている。
こうした人選は機長においてはより顕著である。副操縦士についても組合活動の中心を担ってきた経験豊富な組合員を含む多数の組合員が、...解雇の対象者とされた。結果的に、乗員組合に多数の被解雇者を出した点において、乗員組合に甚大な影響が及んでいる。
このことは、...ILO勧告が、機長組合や乗員組合、あるいは産別組織において中心的な活動を担ってきた控訴人らがこれらの組織の継続的な代表者としての役割を果たせるようにしなければならない(これらの者を解雇してはならない)としていることにも真っ向から反するものである。
狙い撃ちした解雇対象者への退職強要は不当労働行為
整理解雇の...対象者を排除するために、わざわざ10月以降のスケジュールをブランクでアサインして、乗務から外した上で、個人面談を強要した。
退職に応じなければ、再び会社が破綻し、その責任は退職に応じない面談対象者にあるかのような説明を行うものであった。
協議中にもかかわらず、直接組合員に対して、退職を迫るものであり、オーバーザヘッドの支配介入の不当労働行為に他ならない。(ブランクスケジュール・面談による組合員の不利益と団結権の侵害)
組合活動の中心を担ってきた者たちをなんとしてでも排除
この解雇そのものが不当労働行為である(二)
超過達成しても、機長の解雇対象は変えず
※■機長 □副操縦士
■JALは、9月2日の機長組合へ...、希望退職の実施にあたって、機長の人員削減
目標を約130名と明示。
■10月22日まで...に、約140名の機長が希望退職に応じ、...必達目標の130名を
10名程上回った。
□45歳の副操縦士8名をブランクスケジュールの対象者から外し、解雇対象から
外した。
■11月9日の時点では更に10名の応募があり、(機長の)希望退職応募者が合計で
150名に達した。
□15名の副操縦士を解雇の対象外とした。
■12月9日時点までには機長の希望退職応募者はさらに増加し、合計151名に達
していた。
□またもや4名の副操縦士を解雇対象から外した。
JALは、130名を超過して希望退職に応募した機長の削減人数分を、3度にわたって副操縦士を解雇の対象者から外すことに振り向けたのである。
そして、JALは...、機長の希望退職者数が154名に達していたにもかかわらず、12月31日に18名の機長の解雇を強行。地裁で突然“年齢基準で「まず機長から人選する」”とJALの小田陳述書は、機長組合に対して130名の必達目標を明示して交渉に当たってきた経緯に一切触れていない。
そして、機長18名の解雇を強行した理由については、「年齢基準により対象者となる58名については、まず機長から人選しております。そして、年齢の上の機長から解雇を行った場合に、全機種で運航維持が可能となる最大限の人数は8名でした。そのため、年齢基準により解雇対象となる機長は8名になりました。」と述べる。
しかし、JALが示した整理解雇基準や機長組合との交渉の経過で、整理解雇において、年齢基準で「まず機長から人選する」という説明がなされたことは一切ない。
年齢で解雇された機長8名の中に、どんなことがあっても解雇したい対象者が含まれていた
このように全く説明がなされなかった基準を敢えて最後に適用したことは、JALの明確な意図に基づくものであり、解雇対象者の選定が恣意的に行われたことを示している。JALは、年齢で解雇された機長8名の中にどんなことがあっても解雇したい対象者が含まれていたことを認めているのである。
いずれも組合活動の中心を担ってきたもの
年齢基準で解雇された機長たちは、...いずれも乗員組合在籍中から組合活動の中心を担ってきたものである。
乗員組合の委員長経験者が3名、
機長組合の委員長経験者が1名いる。
○○○、○○○、○○○、○○○(日乗連議長)らは、乗員組合の活動の中心を担ってきた者たちであり、...争議権を背景に交渉する組合活動や航空連への加盟をめざしてきた。
航空連への加盟実現後、主要な役職を担う控訴人○○○らをJALは嫌悪していた。これらの者はいずれも更生手続開始決定時においては、機長組合の三役または執行委員であった。
控訴人○○○は...日乗連の役員として、JAL子会社の航空会社の労働組合の交渉にも出席していた。
...このように運航乗務員の組合はJALに対して物を言う組合として継続されてきた。
付言すれば、傷病基準の機長についても、...現役の安全会議議長であった○○○、日乗連の身体検査問題おける責任者であった○○○、乗員組合時代には組合執行委員や専門部員として勤務裁判の中心を担い、航空連事務局次長であった○○○をはじめ、いずれも年齢基準で解雇された機長の組合活動における後継者として活動してきた者が含まれる。
それらの者を解雇することは機長組合の弱体化につながるものである。
機長解雇は不当労働行為であり無効である
こうした経過に照らしても、JALが、従前の控訴人機長らによる組合活動、特に争議権行使に道筋を付けようとしたり、物言う組合との連携を牽引したりする活動を嫌悪して、これらの者を排除しようとしてあえて解雇に至ったものであることが明らかである。
このような行為は、組合員に対する不利益取り扱い(労働組合法7条1号)、および支配介入(労働組合法7条3号)の不当労働行為である。
労組法第7条の不当労働行為禁止規定は、私法上の強行法規でもあるから、同法に違反する解雇は当然に無効である(医療法人新光会事件最判昭和43年4月9日など)。
よって、本件解雇は、不当労働行為である点においても無効である。
組合員からの高い支持のもとで
争議権を背景に物言う乗員組合の活動を嫌悪
多数の副操縦士の解雇は乗員組合への打撃
乗員組合にとっては、...73名の組合員が職場を追われたことになり、組織運営上も重大な影響を受けた。
争議権確立の投票にまで介入して組合の弱体化を図る
ワークシェアリングなど、乗員組合からの雇用維持による解雇回避措置についての協議に一切応じようとせず、また人員体制の達成状況についての情報も提示せずに、挙げ句の果てには、争議権確立の投票にまで介入して、労使対等の立場で、解雇回避に向けて真摯に協議するための手段を封じて解雇を強行した。
こうした不当労働行為について、本件のようにJALがそれを争う場合には、JALにそれを認めさせるために労働委員会等の手続を経る必要がある。そのために、いったんはJALの不当労働行為の強行がまかり通ってしまうことになりかねない。
このようなJALのやり方は、今後の乗員組合の活動についても、重大な影響をもたらし、組合の弱体化につながりかねないものである。
乗員組合の活動の中心を担ってきた者、そして航空連の歴代議長をも排除
副操縦士も解雇された者はすべて乗員組合の組合員であり、乗員組合の方針に従って組合の活動を行ってきた者たちである。
(また)乗員組合の活動の中心を担ってきた者が含まれている。こうした者が解雇されたことは、乗員組合の活動の継承という点からも組合活動上の影響が大きい。
例えば、〇〇〇は、...航空連の議長を務めていた。...勤務裁判では中心的な役割を果たし、その後の経営状況の悪化の中では、経営破綻の責任を追及し、組合員の雇用を維持するために、組合員を結集して活動してきた。
航空連の三代の代表者がいずれも解雇の対象とされることは、航空連にとっても大きな打撃であり、...航空連に対する攻撃そのものでもある。
〇〇〇も、一貫して乗員組合の中心を担い、勤務裁判においては裁判活動と原告組合員をとりまとめる責任者として対応にあたってきた者である。
副操縦士解雇は、正に支配介入の不当労働行為
控訴人副操縦士らに対する解雇は、既に更生計画目標として設定した人員体制は達成しており、解雇すべき根拠が失われていた中で強行された。
解雇された経過に照らしても、JALが、乗員組合が特に組合員からの高い支持のもとで争議権を背景に、物言う組合として活動してきたことに対して、これを嫌悪してきたことは明らかである。
そしてJALの再生後においても、乗員組合の影響力を弱体化しようとしたJALが、多数の乗員組合の組合員を解雇したことは、組合の組織にとっても大きな打撃となる。正に支配介入の不当労働行為である。
よって、本件解雇は、不当労働行為である点においても無効である。
本件解雇は「経営陣および現場が一体となった安全への配慮」を掲げた
更生計画の趣旨からも無効とされなければならない
更生計画においては、更生手続において、「安全確保には常に最大限の配慮を行う必要がある」としている。そして、更生計画における諸施策の実行にあたっては、安全への配慮が疎かになることがあってはならず、経営陣および現場が一体となったコミュニケーションを欠かすことなく、適切なマネージメントを行うことを掲げている。
経営陣と現場が一体となったコミュニケーションの継続は、労使関係の安定なくしては実現困難である。
それは、先に触れたとおり、1973年の乗員組合との協定書で「会社は、本件解雇が、労使相互の信頼関係の維持発展を阻害してきたことを反省するとともに、明るい職場が運航の安全を確保するために必要であることを十分認識し、本件の全面解決を通じ労使関係の正常化と明るい職場作りに努力する」とJALが自ら反省をしてきたことに通じる。
しかるに、本件解雇は、JALの安全を担ってきた運航乗務員における労働組合の活動の中心を担ってきた者を排除し、労働組合の団結権を侵害する不当労働行為として強行された。このことによって、労使関係の安定は大きく阻害された。
このような不当労働行為による解雇は、更生計画の趣旨からも無効とされなければならない。
組合員からの高い支持のもとで争議権を背景に物言う乗員組合の活動を嫌悪
多数の副操縦士の解雇は乗員組合への打撃
乗員組合にとっては、...73名の組合員が職場を追われたことになり、組織運営上も重大な影響を受けた。
争議権確立の投票にまで介入して組合の弱体化を図る
ワークシェアリングなど、乗員組合からの雇用維持による解雇回避措置についての協議に一切応じようとせず、また人員体制の達成状況についての情報も提示せずに、挙げ句の果てには、争議権確立の投票にまで介入して、労使対等の立場で、解雇回避に向けて真摯に協議するための手段を封じて解雇を強行した。
こうした不当労働行為について、本件のようにJALがそれを争う場合には、JALにそれを認めさせるために労働委員会等の手続を経る必要がある。そのために、いったんはJALの不当労働行為の強行がまかり通ってしまうことになりかねない。
このようなJALのやり方は、今後の乗員組合の活動についても、重大な影響をもたらし、組合の弱体化につながりかねないものである。
乗員組合の活動の中心を担ってきた者、そして航空連の歴代議長をも排除
副操縦士も解雇された者はすべて乗員組合の組合員であり、乗員組合の方針に従って組合の活動を行ってきた者たちである。
(また)乗員組合の活動の中心を担ってきた者が含まれている。こうした者が解雇されたことは、乗員組合の活動の継承という点からも組合活動上の影響が大きい。
例えば、〇〇〇は、...航空連の議長を務めていた。...勤務裁判では中心的な役割を果たし、その後の経営状況の悪化の中では、経営破綻の責任を追及し、組合員の雇用を維持するために、組合員を結集して活動してきた。
航空連の三代の代表者がいずれも解雇の対象とされることは、航空連にとっても大きな打撃であり、...航空連に対する攻撃そのものでもある。
〇〇〇も、一貫して乗員組合の中心を担い、勤務裁判においては裁判活動と原告組合員をとりまとめる責任者として対応にあたってきた者である。
副操縦士解雇は、正に支配介入の不当労働行為
控訴人副操縦士らに対する解雇は、既に更生計画目標として設定した人員体制は達成しており、解雇すべき根拠が失われていた中で強行された。
解雇された経過に照らしても、JALが、乗員組合が特に組合員からの高い支持のもとで争議権を背景に、物言う組合として活動してきたことに対して、これを嫌悪してきたことは明らかである。
そしてJALの再生後においても、乗員組合の影響力を弱体化しようとしたJALが、多数の乗員組合の組合員を解雇したことは、組合の組織にとっても大きな打撃となる。正に支配介入の不当労働行為である。
よって、本件解雇は、不当労働行為である点においても無効である。
本件解雇は「経営陣および現場が一体となった安全への配慮」を掲げた
更生計画の趣旨からも無効とされなければならない
更生計画においては、更生手続において、「安全確保には常に最大限の配慮を行う必要がある」としている。そして、更生計画における諸施策の実行にあたっては、安全への配慮が疎かになることがあってはならず、経営陣および現場が一体となったコミュニケーションを欠かすことなく、適切なマネージメントを行うことを掲げている。
経営陣と現場が一体となったコミュニケーションの継続は、労使関係の安定なくしては実現困難である。
それは、先に触れたとおり、1973年の乗員組合との協定書で「会社は、本件解雇が、労使相互の信頼関係の維持発展を阻害してきたことを反省するとともに、明るい職場が運航の安全を確保するために必要であることを十分認識し、本件の全面解決を通じ労使関係の正常化と明るい職場作りに努力する」とJALが自ら反省をしてきたことに通じる。
しかるに、本件解雇は、JALの安全を担ってきた運航乗務員における労働組合の活動の中心を担ってきた者を排除し、労働組合の団結権を侵害する不当労働行為として強行された。このことによって、労使関係の安定は大きく阻害された。
このような不当労働行為による解雇は、更生計画の趣旨からも無効とされなければならない。