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JAL不当解雇撤回争議団

JAL不当解雇との闘い

事件の概要

2010年1月19日、東京地方裁判所において、JALの会社更生手続きが開始されました。同年8月31日に東京地方裁判所に更生計画案が提出され、株式会社企業再生支援機構(同機構は、2013年3月に商号を株式会社地域経済活性化支援機構に変更)の企業再生支援委員会は、本件更生計画案が可決され更生計画認可決定がなされることを条件として、3500億円を出資することを決定しました。

管財人らは、特別早期退職措置、希望退職措置を実施しながら、唐突に整理解雇の人選基準案として年齢基準と病歴基準を提示しました。そして、この人選基準案に該当するパイロットと客室乗務員にたいして、10月から12月末の解雇日まで自宅待機とし、会社との面談を繰り返しました。こうした仕事外しは、日常的に飛行する勤務を続けることによって国家資格が維持されていく乗務員にとっては、退職強要でしかありませんでした。

これにたいして日本航空乗員組合(JFU)と日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)は、組合員に整理解雇の危機が迫っていることから、整理解雇を撤回する要求を確立し、争議権投票を開始しました。そこで管財人らの争議権に関する支配介入の不当労働行為が行われたのです。こうした状況を経て、JALは12月9日に整理解雇を決定し、パイロット81人と客室乗務員84人が大晦日に解雇されました。

被解雇者らは、東京地裁、東京高裁で3年半闘いましたが、いずれも解雇を容認するという不当な判決が出されました。そのため2014年6月に上告しましたが、書面が最高裁に届いて、わずか4か月足らずの期間で上告棄却の決定がなされた事件です。

                             
地裁、高裁での経過
2010年12月31日 JALは、乗員81名、客乗84名を整理解雇
2011年1月19日 被解雇者148人は、東京地裁に提訴
8月3日 東京都労働員会から不当労働行為救済命令
2012年3月29日 乗員訴訟判決「解雇有効」とする不当判決
3月30日 客乗訴訟判決「解雇有効」とする不当判決
4月11日 被解雇者142人は、東京高裁へ控訴
6月15日 ILO(国際労働機関)から政府に、第1次勧告
2013年10月31日 ILO(国際労働機関)からフォローアップ見解表明(第2次勧告)
2014年6月3日 客乗控訴審判決「解雇有効」とする不当判決
2014年6月5日 乗員控訴審判決「解雇有効」とする不当判決
6月17日 乗員64人、客乗71人が最高裁へ上告
2015年2月4日 客乗上告、受理申立てを却下する決定
2015年2月5日 乗員上告、受理申立てを却下する決定

JAL破綻の原因

JALの経営破綻の原因は、
本業以外のホテル・リゾート開発(1300億円の損失)や、破綻直前の2008年の原油先物買い(1900億円の損失)、日米貿易摩擦解消のためのジャンボ機の大量導入(一機200億円を113機導入)、地方空港の乱造と高い公租公課(着陸料など)、政治家の圧力での不採算路線への大型機就航など、放漫経営と歪んだ航空行政にありました。

ところが、管財人らは、社員を集めて「破綻の原因はあなた方にもある」「京セラの様に内部留保を一兆円貯めてから安全を語れ」などと、発言を繰り返し、JALフィロソフィー教育を通して社員の意識改革を行ないました。また、破たんの原因を造った当時の経営者たちの責任は追及しないまま、社員には公的資金が投入されたことを理由にして、賃金の3割~4割カット、大幅な長時間勤務の労働条件の切り下げを強行しました。

高裁判決の問題点
更生手続下における整理解雇法理の適用は肯定しながら、更生計画を根拠に管財人の経営判断が容認される判決

1.客室乗務員高裁判決では、「被控訴人の管財人がした本件解雇に係る人員削減の実施が、被控訴人の事業を維持更生するという目的に鑑み、更生計画の基礎をなす事業再生計画に照らして、その内容や時期について合理性が認められるときや、更生手続に基づき更生会社の事業の維持校正を図るため不可欠な融資を得るために、その時期に整理解雇に係る人員削減を実施する必要が認められるときなどは、更生会社である被控訴人を存続させ、これを合理的に運営する上でやむを得ないものとして、人員削減の必要性が認められるものと解するのが相当である」としています。
2.パイロット高裁判決では、「本件更生計画は、事業規模に応じた人員体制とするという内容であって、本件解雇は、更生計画を実現するために必要な措置として合理性が認められる」として、「会社更生法は、事情が変更した場合には、更生計画の変更という制度を用意し、利害関係人の利益調整の再調整を図るべきこととして、更生計画との調和を図っていると解されることから、更生計画の根幹に関する『更生計画の変更』と観念される事項について変更手続きを履践することなく更生計画の遂行内容を変更することは、法の趣旨に悖り許されない」とされました。

更生計画を整理解雇法理に優越させる判決
1.解雇の必要性や解雇の規模、解雇時期等は、管財人の合理的な経営判断にまかせられてしまいます。そして更生計画の内容である人員削減は行わなければならなくなり、解雇の必要性は更生計画通りに肯定されてしまいます。
2.更生計画を重視する客室乗務員判決。控訴人が人員削減目標数は解雇時点においてすでに超過して達成されていたことを具体的数値によって立証したにもかかわらず、判決はその正確性に疑問があるとして排斥しました。解雇の必要性の立証責任まで控訴人に負わせる判決となっています。

今後の濫用が懸念される
JAL破綻のケースを前例にして、会社は更生手続、更生計画という裁判所を介しての手続きを踏めば、整理解雇法理を回避することができるようになり、今後の労働争議に大きな影響を与えるものとなる恐れがあります。

空の安全が理解できない判決
控訴審においても、航空の安全とのかかわりを忘れずに、原告は主張立証してきました。特に整理解雇4要件のうちの人選基準の合理性は、安全に大きくかかわる重要なポイントといえました。
高年齢を解雇の基準とし、ベテランから排除する差別的取り扱いは、国際基準にも反し、安全の層を薄くすることになりました。そして安全運航のために、規則に従って病気欠勤した履歴を解雇の基準としたことは、職場に残っているパイロットと客室乗務員に「休まず働け」と無言の圧力をかけているのです。
パイロット訴訟の判決には、解雇によって安全運航が低下するとの根拠がなく、現にそのような状況が生じたとしても、証拠上認められないと言い放っています。裁判所の求める証拠とは、あの123便事故のような惨事が起きていないということを暗示しているとしか思えず、「空の安全とは何か」を理解できない不見識極まりないものといえます。

最高裁での取り組み
憲法違反
東京高裁で出された客室乗務員とパイロットの二つの判決は、会社側の主張のみを採用し、会社更生法を絶対視した判決でした。また、解雇された労働者の立場を一切顧みない判断は、憲法13条(個人の尊重)、憲法14条(法の下の平等)、憲法25条(国民の生存権)、憲法27条(勤労の権利)、憲法28条(勤労者の団結・団体交渉権その他の団体行動権)等、多くの憲法条文解釈を誤った判決であるのです。
労働者に責任のない整理解雇は、労働者の勤労権、使用者の雇用維持努力義務の観点からできる限り回避しなければないことは憲法上の要請となっています。会社更生法を憲法より優位に置いた東京高裁判決は、憲法解釈を誤った判決です。

判例違反、解釈適用の誤り
労働契約法16条には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効である。」とされています。
整理解雇が最終的に余剰人員に対して行われることは、整理解雇の必要最低限の要件です。その余剰人員数が明らかでないまま、整理解雇を有効とすることは、労働契約法16条・整理解雇法理の解釈・適用の誤りです。

裁判官の釈明権
裁判官の釈明権とは「訴訟の内容を明確にさせるために、当事者に対して法律上及び事実上の点に関して発問して、その陳述に釈明を与えあるいは立証を促す裁判所の権能。」と説明されています。つまり、不完全な弁論のままで裁判を進行することは当事者に対して不親切であり裁判の威信を損なうことになります。そこで裁判所は陳述の矛盾や不完全不明確を指摘してこれを訂正する機会を与え、立証を促すのです。

この点に関して、整理解雇の必要性をめぐる余剰人員数の裁判におけるやり取りを比較してみます。

1.原告の立証
解雇時点において、希望退職と自然退職によって、人員削減目標が超過達成し、余剰人員がなかったことを、JALの資料を基に立証した。
削減しすぎた結果、客室乗務員の人員体制目標4120人に対し、解雇時点で4042人、パイロットは、目標2974人に対し、2864人であり、解雇の必要はなかったことを主張した。

2. JALの主張
原告の立証に対して、最終準備書面の段階で、正確性に欠ける(客室乗務員裁判)、不正確な想定に基づく(パイロット裁判)と主張した。 
その一方で、解雇時点で、人員を何人削減し、その結果、人員体制が何人になったのかという重要な事実を隠したままであった。

3.裁判所の判断
余剰人員はなかったことを立証した原告の主張を、「不正確」あるいは「人員削減目標数は不動のものではない」として退けた。一方、JALに対して、解雇時点の人員数を明らかにさせず、余剰人員の立証責任をも問わなかった。

こうした「釈明権」行使を放棄した裁判官の姿勢こそが、裁判の不当性を表しています。

上告審決定の問題点
まともな審理をせず結論ありきの不当な決定
2015年2月4、5日付で最高裁は、客乗及びパイロット訴訟ともに、上告棄却・上告不受理の不当な決定をしました。これは最高裁に全ての訴訟関係の書面等が届いてから、客乗訴訟は約4ヵ月、乗員訴訟については3ヵ月にも満たない中での決定でした。この異例の速さが示す通り、最高裁はまともな審理を行うことなく、結論ありきで早々に決定を下したのです。これは最高裁が裁判を放棄したといえます。

最高裁に求められた判断は何一つ示していない
本件は、会社更生手続き下で行われた整理解雇が初めて争われた事件でした。この点からも原告団が上告理由書で「審理不尽」「理由不備」として述べた整理解雇法理、信義則、不当労働行為に関する法令、及び労働権を保障する憲法の解釈の誤り等々の諸点について、最高裁としての判断が求められていたのです。
しかしこれらの点について何一つ判断せず不当決定をしました。これでは、最高裁の役割を何一つ果たしていないのです。

「世界で一番企業が活躍できる国」を進める意図的決定
同時に不当決定は、高裁の不当判決を追認することで、会社更生手続きを悪用したリストラに道を開く許しがたいものです。これは、「国のために」また「経済や企業のために」、国民や個人の犠牲は当然とする、安倍政権の「戦争する国づくり」「世界で一番企業が活動しやすい国づくり」を、司法も一体となって進めるという政治的意図をもった不当決定であり、断じて許すわけにはおけません。

解雇の不当性がより鮮明になる中で、急いでふたをした意図的決定
本決定は、JALの整理解雇の不当性がますます明らかにされる流れの中で出されました。
以下に述べるような解雇の不当性、高裁判決の誤りがこれ以上社会的に広がる前に、意図的にふたをするために行った不当な決定と言えます。
・高裁結審後、JALの人員削減目標超過達成の隠ぺいが国会でも追及され、嘘とごまかしによる不当解雇とそれを擁護する政府の対応が一層鮮明にされる過程にあったこと。
・2014年8月28日の不当労働行為裁判で管財人(弁護士)の不法行為が断罪されたこと。
・2015年1月28日の大阪地裁で争われた不当解雇撤回裁判で解雇無効の判決が出されたこと。
・ILOの2度にわたる勧告、それを履行しない政府と日航への国際的な批判。そして第3次勧告に向けての運動の途上にあったこと。
・人材流出が続き、客乗職は大量の新規採用、パイロットも訓練生の新規採用等を開始したものの深刻な人員不足に陥っていることなど、再建計画と人員削減・不当解雇の矛盾が深刻化し、だれの目にも明らかになってきた日航の職場実態。

不当解雇撤回に向けて
2015年5月現在、この3年余りで、客室乗務員の新規採用は、2300名を超え、加えてパイロットの訓練も再開され、新規採用も始まりました。ベテラン乗務員を会社の都合で解雇しておいて、大量の新人を採用することは、大きな矛盾といえます。加えて“乗員不足”の補完として、2015年度から60歳を過ぎたパイロットの契約再雇用制度の導入を発表しました。ILOから出された2度の勧告は、この事実を重く受け止め、原告が職場復帰できるように、採用計画に含めよと言っているのです。

解決していくべきこと

職場の解決
乗員組合と CCU 組合は、解雇直前に管財人から不当労働行為を受け、組合の活動と団結を妨害されました。両組合は、2014年末4年ぶりにスト権をたて解雇撤回を求め交渉し、解決のための職場の団結を取り戻しました。

JALの解決
解雇後、現役パイロット170人が他社に転職し、人員流出に歯止めがかからず、客 室乗務員と同様に新人を募集しています。JALは解雇したべテランを職場に戻すという解決をしなければなりません。

政府の解決
国交省と厚労省は、ILO勧告に従いJALに解決を促すべきです。ILOは一度勧告を出したら、解決するまで監視を続けます。

世界からの解決
政府もJALもILO勧告を無視していることに対し、国外では、ITF(国際運輸労連)・IFALPA(国際定期操縦士協会連合会)・OCCC(アライアンス内の乗員組合)など運輸関係の労働団体が、解決のため全面的に支援することを決議しています。

マスコミの解決
昨年末ジャパンタイムズから客乗原告団長が取材を受けました。記事では、解決のためにも最高裁として判断の信頼性が注目されているとしています。また、乗員原告団長はラジオフォーラムで、インタビューを受けました。この様にマスコミも争議の解決を注視しています。

現在、国内での支援の広がりはもちろん、国外からの支援の輪も広がっています。

原告団は、一日も早い職場復帰を勝ち取るために、解雇自由な社会にさせない闘いとともに、空の安全を守る闘いを展開して行きます。



【JALの解雇基準】
●年齢での解雇基準
 ◇機長    55歳以上
 ◇副操縦士  48歳以上
 ◇客室乗務員 53歳以上
●病歴での解雇基準
  一定日数以上の病欠者を対象に多くが30歳~40歳代

165名が解雇された時点での状況は、
①人員削減目標を、パイロット110名、客室乗務員78名も超過して退職していた
②営業利益は、約1600億円もあり、まさに解雇する理由がなく、ますます解雇の正当性が疑われるものです。
(当時の状況)

【審理をつくしていない不当判決】
本件について東京地裁・高裁は、会社更生手続下で行われた整理解雇についても整 理解雇法理が適用されるとしたものの、大型会社更生事件であるとの特殊性を過度に重視し、以下のような事実関係から意図的に目をそらし、解雇を有効としま した。これは、整理解雇法理、信義則、不当労働行為に関する法令、及び労働権を保障する憲法の解釈を誤るとともに、審理をつくしていない不当判決でした。
・整理解雇時点で人員削減計画の目標を超過達成していたこと
・整理解雇を回避する有効な手段がいくつもありながらそれが何ら履行されていないこと
・病気休職者や年齢の高い者が合理性を欠く整理解雇基準で解雇されていること
・協議交渉の過程で支配介入の不当労働行為が行われるなど手続きの妥当性を欠いていること
・整理解雇自体が原則的運動方針をとる労働組合の弱体化を狙った不当労働行為であったこと

【裁判では当事者が当事者を裁くという様相】
東京地裁片山弁護士を管財人に指定(JAL再生後はJAL社外監査役に就く)。
コンプライアンス委員会の委員長に
才口千春(元最高裁判事)氏、副委員長に甲斐中辰夫(元最高裁判事)氏という布陣を敷いた。
※コンプライアンス委員会とは第三者の視点から、JALの経営破綻要因及び経営上の問題等を調査することを目的として設置されたもので、委員会は歴代経営者について、その経営責任を不問にした

東京地裁判決の約二ヶ月前に、コンプライアンス委員会の副委員長であった甲斐中辰夫(元最高裁判事)氏が、係争中であるにもかかわらず、日本航空社外取締役へと天下り。

東京地裁判決では・・
東京地裁が選任した
管財人が「更生計画」を作成
 ⇒東京地裁が、その更生計画を「認可」
 ⇒
管財人が被告となり、東京地裁が判決を下している。
 まさに当事者が当事者自身を裁くという様相

【誰も責任を取っていないJALの破綻】
 そもそもの破たんの原因は、航空行政とJAL の放漫経営にありました。しかし、 政府も歴代の経営者も責任をとることはありませんでした。
 それどころか、
偏った人選でコンプライアンス委員会を立ち上け゛、これを利用して、経営責任や行政責任を免罪するという仕組みを使ってきました。経営破たんの引き金となった燃油のヘッジ(2008 年契約)では 1937 億円の損失を出しました。 その責任者の一人であった菊山英樹氏は、東京地裁の法廷で、当時の経営状況と解雇の必要性をとうとうと述べ、現在では専務執行役員にまで昇格しています。
私たちは、労働者犠牲の再建は許さないと国民世論に訴えていきます。

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